環境関連法


環境基本法

地球サミットが開催された翌年の1993年に、地球環境問題などに対応するために、従前の公害対策基本法に代わって成立。

環境保全の基本理念や施策の基本事項などを定め、国などの責務を明らかにし、施策を総合的かつ計画的に推進することを目的としています。

基本理念は、

1)環境への恵沢の享受と維持等(第3条)

2)環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等(第4条)

3)国際的協調による地球環境保全の積極的推進(第5条)

 


生物多様性基本法

生物多様性条約に基づく生物多様性国家戦略が国内法の裏付けを持たなかったことから、生物多様性に関する基本法として2008年に成立。

生物多様性の保全、持続可能な利用に関する基本原則や生物多様性国家戦略の策定などを定め、国などの責務を明らかにし、施策を総合的かつ計画的に推進することを目的としています。

基本原則は、

1)野生生物の種の保存と多様な自然環境の保全

2)生物多様性に及ぼす影響の回避・最小化と国土および自然資源の持続可能な利用

3)予防的な取り組みと順応的な取り組み

4)長期的な観点からの生態系などの保全および再生

5)生物多様性の保全などによる地球温暖化防止などへの寄与

 


環境影響評価法

従前、環境影響評価は、閣議決定による要綱アセスとして行われてきましたが、1997年に環境影響評価法が成立。

環境影響評価に関する国などの責務を明らかにし、影響の著しい規模の大きな事業について、環境影響評価が適切で円滑に行われるための手続きなどを定め、その結果を事業内容に反映させることを目的としています。

 


鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律

以前は狩猟法(1918年制定)と呼ばれ、現在でも本法律に基づき有害鳥獣駆除が進められています。2002年に大きな改正があり、カタカナ表記から上記名称に改められました。(略称:鳥獣保護法)

鳥獣保護事業の実施、鳥獣による被害防止、猟具使用に伴う危険予防を行い、鳥獣の保護や狩猟の適正化を図ることを目的としています。

 


文化財保護法

1950年に制定された法律で、天然記念物や特別天然記念物などの文化財の指定を通じて生物多様性の確保に一定の役割を果たしてきました。

文化財の保存・活用を通じて、国民の文化的向上や世界文化の進歩に貢献することを目的としています。

 


絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律

ワシントン条約の国内法としての役割を持ち、1992年に成立。(略称:種の保存法)

絶滅のおそれのある野生動植物の保存を図ることで、良好な自然環境を保全することを目的としています。

 


特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律

外来生物が国内の生態系に影響を及ぼすようになり、対応策として2004年に成立。(略称:外来生物法)

特定外来生物の飼養・輸入などを規制し、国などによる防除などの措置を講じ、生態系などへの被害を防止することで、生物多様性の確保、人の生命や身体の保護、農林水産業の健全な発展を図ることを目的としています。

 


自然公園法

戦前の1931年に制定された国立公園法が前身で、戦後1957年に自然公園法として新たに成立。

自然環境の保全において、自然環境保全法と相互補完の役割をしています。

優れた自然の風景地の保護と利用の増進を図り、国民の保健・休養などと生物多様性を確保することを目的としています。

国立公園、国定公園、都道府県立自然公園の3つがあります。

 


自然環境保全法

環境庁発足の翌年、1972年に成立。

当初は自然環境保全分野の基本法としての役割を担うものでしたが、環境基本法成立の際に基本法としての役割を終え、現在では自然公園法と互いに補完的な役割を持っています。

生物多様性の確保などの自然環境の適正な保全を総合的に推進することで、国民が自然環境の恵沢を享受し、将来の国民に継承することを目的としています。

 


都市公園法

過密化が進む都市部では公園緑地が持つ環境保全機能や防災機能が貴重なことから、1956年成立。

都市部の緑地の確保において、都市緑地法と互いに補完的な役割をしています。

都市公園に関する基準などを定めて、都市公園を健全に市民に役立てることを目的としています。

 


都市緑地法

都市に残る緑地の保全などのため、1973年に成立。

制定当初は都市緑地保全法という名称で、2004年に都市緑地法に改名。

都市部の緑地の確保において、都市公園法と互いに補完的な役割をしています。

都市における緑地の保全・緑化の推進に関する必要事項などを定め、都市公園法などと連携し、良好な都市環境を形成することを目的としています。

 


自然再生推進法

全国各地で進められていた自然再生活動を後押しするための、自然再生事業の基本法的な役割を持ち、2002年に議員立法により成立。

自然再生に関する基本理念や基本方針の策定などの必要な事項を定め、関係者の責務を明らかにし、自然再生に関する施策を総合的に推進することによって、生物多様性の確保などを実現することを目的としています。

基本理念は、

1)生物の多様性の確保を通じて自然と共生する社会の実現を図り、地球環境の保全に寄与すること

2)地域の多様な主体が連携し、透明性を確保しつつ、自主的・積極的に取り組む

3)地域における自然環境の特性、自然の復元力、生態系の微妙な均衡を踏まえ、科学的知見に基づいて実施する

4)自然再生事業の着手後も状況を監視し、監視結果に科学的な評価を加え、これを事業に反映させる順応的な取り組み

5)自然環境学習の場として活用されるよう配慮する

 


環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律

2002年のヨハネスブルク・サミットをきっかけに、環境教育の推進に関する機運が高まり、議員立法により成立。(略称:環境教育推進法)

環境保全活動の意欲の増進や環境教育に関する基本理念や基本事項などを定め、関係者の責務を明らかにして、現在および将来の国民の健康で文化的な生活を確保することを目的としています。

基本理念は、

1)環境教育は、国民・民間団体などの自発的意思を尊重しつつ、多様な主体が適切な役割を果たして行う

2)環境教育は、多様な主体の参加と協力を得るよう努めるとともに、透明性を確保しながら継続的に行う

3)環境教育は、自然環境の育成の重要性への一般の理解、公益との調整、農林水産業との調和、環境保全に関する文化・歴史の継承などに配慮して行う

 

 


■その他、国内法では、自然環境や生物多様性の確保への配慮している法律として、

河川法、水質汚濁防止法、湖沼水質保全特別措置法、公有水面埋立法、森林法、国有林野の管理経営に関する法律、食料・農業・農村基本法、土地改良法、水産基本法、水産資源保護法、地球温暖化対策の推進に関する法律、循環型社会形成推進基本法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などがあります。

 

 


生物の多様性に関する条約(生物多様性条約)

1987年から国連環境計画(UNEP)が準備を開始し、1992年の地球サミットで採択され、1993年に発効し、同年、日本も締結。

生物の多様性の保全と、その構成要素の持続可能な利用や遺伝資源の利用から生ずる

利益の公平かつ衡平な配分を実現することを目的としています。

 

 


特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約(ラムサール条約)

1960年代に国境を越えて行き来する渡り鳥、特に水鳥の生息地である湿地を保護する機運が関係諸国間で高まり、1971年にイランのラムサールで開催された「湿地及び水鳥の保全のための国際会議」で採択され、1975年に発効、日本でも1980年に締結。

特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地およびそこに生息・生育する動植物の保全を促し、湿地の適正な利用を図ることを目的としています。

 

 


世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)

1972年にパリで開催された第17回国際連合教育科学文化機関(UNESCO)総会で採択され、1975年に発効し、日本でも1992年に締結。

文化遺産や自然遺産を人類全体のための遺産として損傷・破壊などの脅威から保護し、保存していくために、国際的な協力および援助の体制を確立することを目的としています。

 

 


絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)

1972年の国連人間環境会議で関連条約案が作成され、それを受けて米国政府および国際自然保護連合(IUCN)が中心となって本条約の作成作業が進められました。1973年にワシントンで採択され、1975年に発効し、1980年に日本も締結。

絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引の規制を目的としています。

 

 


気候変動に関する国際連合枠組条約(気候変動枠組条約)

1992年にニューヨークで作成され、同年の地球サミットで採択、日本でも1992年締結。
1994年に発効。
1997年に京都で開催された会議(COP3)で京都議定書が採択され、2005年に発効。

気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすことにならない水準で、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるために、締結国が協力して温室効果ガスを削減することを目的としています。

 

 


(参考資料:環境教育辞典(日本環境教育学会編)教育出版/ビオトープ管理士資格試験公式テキスト((財)日本生態系協会監修)日本能率協会マネージメントセンター ほか)